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つまりそういうこと

「伊豆の踊子」読書感想文

川端康成の「伊豆の踊子」を読んだ
40pくらいの短編ながらいい話だった。
大まかに言えば、大学生の主人公が伊豆に旅行へ行く話。そこで、踊り子を見かける。どうにかして踊り子と仲良くなりたいと思って、一度は金を出して一夜を過ごそうとも思う。とにかく会わないと意味がないということで、彼女のいる旅の芸人集団を追いかけていたら、そこの男と仲良くなり、一緒に旅をすることになって数日間一緒に過ごす。踊り子は主人公に恋するんだけど、家の事情でもう会うことはできず、主人公も打ち解けて事情を知ったからには、金を出したり(踊り子ってのは旅先で芸を披露する)、強引に二人きりになるということもできずで、そのまま二人の間には何も起きず、その別れに涙をしながら主人公は家に帰っていくという話。

ということで感想。
夏目漱石のラストのところだけを切り出して、もっと純粋な淡い恋愛を残したような作品だった。どうも俺はキモヲタのくせに恋愛の話が最も気に入る傾向がある。ちらっと見た踊り子とどうにかして接点を持とうとして追いかけるところとか、二人きりになれる機会をうまく探すところとか、その機会を得ても妨害が入ってうまくいかないといったちょっとした努力をしつつも、結局何も起きずに帰るところが非常に切ない。囲碁を一緒にやるときに顔が近づいたりしてはっとするところとか、本を読み聞かせると踊り子がめちゃくちゃ近づいてじっと見つめてくることにドキドキするところとか、わかるだろ?その気持ち。
たった40Pにここまで凝縮させるのは本当にすごい。普通に素人がこの内容を書いたら、ただの要約か、事実の羅列になると思う。
芸人の集団と一緒に行くっていう大義名分、本筋を強く意識させながら、さりげなく二人の関係を差し込んでいく手法が上手い。そうすることで、いろんな仕草がわざとらしくなくなって、一方で大義名分の中でアプローチしようとする主人公の感じが際立ってくる。

まぁそんなわけで、40Pだからみんな読んでくれよな。さすがに太宰治を馬鹿にできるだけの実力はちゃんと持ってるんだな。