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つまりそういうこと

「春の雪」読書感想文

今回は、三島由紀夫「春の雪」を読んだぞ!
この作品は「豊饒の海」四部作の第一巻で、ハリーポッターでいうと賢者の石みたいなもの。
とはいえ、第一巻から普通にクライマックスを迎えてきて一冊で完結したと言われれば、納得する人間もいそうな濃い内容である。わかりやすい構成なので、要約もたぶんわかりやすいと思う。簡単に言えば、主人公が絶対に報われない恋をして、最後は病気で死ぬっていう話。
主人公である清顕は侯爵家の息子で、この家は元々そんなに偉い家系じゃなかったんだけど明治時代にいろいろな功績を建ててなんとかここまで上り詰めた家で、たまたま教育の為に綾倉家に預けられて育てられたことがある。
そして、この綾倉家の娘の聡子が主人公の恋する相手。あとは、弁護士志望の本多君。こいつがいい感じに清顕を助けるいいやつなんだなぁ。

さて、大雑把な要約があまりに雑すぎて、清顕と聡子の身分が全然違うように見えるんだけど、実はほとんど同じくらいでむしろ勢いで行けば清顕の家の方が立場は上。しかも最初は聡子の片思いで、主人公は彼女の思わせぶりな態度や、下に見ているような態度を侮辱だと捕えて、むしろ避けていたくらいで、散々侮辱する内容の手紙を書く。ところが、それを送ると同時にちょうと日本に来ていたシャムの王子に、「ぼくには彼女がいるんだ」と見栄を張っちゃって、急いで聡子に手紙が届いたら開けずに焼くように言う。そのあと、いろいろあって二人は結ばれるんだけど、またまた同時に聡子が皇族に求婚されてしまう。それと、同時に手紙を焼かずに実は読んでいたことを知って、清顕がぶちギレて綾倉家からの連絡を全て無視しているうちに、聡子の縁談を止め損なう。そうして、ついに縁談が撤回できなくなった時に急に聡子のことを本当に愛するようになる。本多とかその他もろもろのやつらに隠れて会っているうちに、結婚式まであとわずかまで近づいていくんだけど、聡子が清顕の子どもを身ごもって、おろすことになる。その罪に苛まれて、彼女は出家。最後病気で死にそうになりながら清顕は彼女に会おうとするんだけど、結局会えず、本多に看取られて無事死亡。

という流れで、次は感想。

絶対に成し遂げられないという境遇で湧き上がる恋、いつかは会うことすらできなくなる境遇における美っていうのがこの話だと思う。そして、既に会えなくなっているのにも関わらず命を懸けて会いにいくところの意志の美学。それこそがこの作品の本筋だと思う。その証拠に、聡子が出家してから少しの間、清顕は普通の人生を送るんだけど、その境遇を抜け殻の空虚なものだと言っている。清顕の家の自らの意志を抑えて、害を避けることによって、裕福で権威や地位を持っている有様に対する批判と、それと正反対の手の届かない、絶対的な権威をもろともせず、命を懸けて追い求めていく美学がこの作品にはあると感じた。

で、次の第二巻は奔馬、ちょっと読んだけど今度は本多37歳が生まれ変わりの清顕に会うらしい。すごくわかりやすい話の中に、めちゃくちゃ謎が残っててたぶんこれ伏線だと思うから、わくわくしながら次読みます。