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つまりそういうこと

読書感想文 大江健三郎「万延元年のフットボール」

どうも僕です。
今回は大江健三郎の「万延元年のフットボール」について書きます^^ノーベル賞を受賞した一番の理由だそうですわ。
それもそのはず、この小説には日本人なら誰でも共感できる村社会的な国民性が詰め込まれているからです。僕の嫌いな日本がよく出ている一方で、純粋に人間的な心情も描かれていてギッシリ詰まった感じ。

要約
 話はケツにキュウリ突っ込んで顔面を真っ赤に塗って、自殺した友達のことを思い出しながら、浄化槽のくぼみの中に入ってボーっとしてるところから始まる。もう既に面白い。妻はアル中、息子は白痴。おまけに主人公は片目が潰れている。純文学にしてはキャラが立ちまくってるところも既に面白い。弟が帰ってくるということで、彼の熱烈な信者ともいえる星夫と桃子の二人と主人公夫婦で出迎えに行く。この弟は安保闘争で散々殴り合いをした挙句、アメリカで黒人の娼婦とセックスして性病にかかったキチガイ。自殺した友達とは性病の薬をもらいに行くときに会っている。
 弟は主人公夫婦の子どもが白痴だったことを聞いて同情しつつも、兄弟の育った田舎に帰ることで気分転換しようと言い出す。田舎に進出していた巨大スーパーマーケットの天皇と呼ばれる人物に建物を売ってその金で暮らそうというのだ。帰る途中、主人公の死んだ兄さんであるS兄さんが二度朝鮮人部落に特攻を仕掛けて二回目で撲殺されたことが明かされる。また曾祖父の弟が万延元年に若者を集めて一揆をおこし、襲われそうになった曾祖父が家の倉屋敷に籠り、銃で応戦したこと、最後には一揆衆が倉屋敷に追い詰められ、散々自分たちを支持してきた村人に見捨てられて全員死んだという話が開かされる。こうした話は弟から出るもので、彼らを英雄視するような発言に主人公はイライラしながら全部反駁した。S兄さんは実はグループの一番の下っ端で、一回目の特攻の被害を償うために殺されにいったとか、曾祖父の弟は実は藩と裏で示し合わせており、一人だけ逃げた卑怯者だとかいう事実が明かされてくる。
 さて、そんな議論は過ぎ去って、弟は村の若者を集めてフットボールチームを作り、そのリーダーとして力を発揮する。川におぼれた子どもを助けたりした。そしてある日、事件が起こる。スーパーマーケットにフットボールチームの若者を率いて弟が商品を強奪したのだ。そしてその暴動は村ぐるみに発展して、スーパーマーケットが如何にぼったくりであるかを喧伝したりしてお祭り騒ぎ、念仏踊りという祭までも復活させ、こうして村ぐるみの犯罪が行われる。一方、主人公はその間倉屋敷に引きこもって全く関係ないアピールをしているところだ。このまま盗んだ商品ごと店を買い取ろうという話にまで発展し、暴動は成功しそうだった。
 しかし!リーダーの弟が女の子を強姦しようとして殺してしまい、フットボールチームは解散、暴動も終了する。彼は殺すどころか強姦すらいなかったのに嘘をついており、主人公が論破するも無視して、過去に妹とセックスしまくって自殺させたことを告げて自殺して終了。最後にスーパーマーケットの天皇がやってきて、村の人間がコソコソ恥を感じながら隠れているシーンと、妻と弟の間にできた子どもを養うべくアフリカにいくぞ!って感じで終わる。

 要約するのがだるくなってきたので途中から無理矢理切りました^^^まぁ何はともあれ、すごくいろんな要素が詰め込まれているのがこの作品ですわ。まず、「死者に口なし」ということ。主人公の友達、S兄さん、曾祖父の弟についていろんな解釈がされていくんだけど、弟によってすごく英雄的にされ、主人公によって卑怯者にされていく。S兄さんに関しては弟は割と間違ってる感じだったけど、曾祖父の弟に関しては実は逃げたんじゃなくて倉屋敷の地下に籠って自己幽閉してたという英雄の姿が正解だと思われたり、友達に関しては完全に謎だったりと余計な想像ばっか考える感じが出てくる。
 上には出てないけど、田舎の家に住んでる日本一の大食いジンや隠遁者ギーっていうキチガイが出てきて村社会に必ず一人存在させられるものとして描かれているとか、村の人付き合いの階層や、若者を中心としたならず者グループなど、村の構造を縦にも横にも描いている。
 また、スーパーマーケットの強奪に関しては「赤信号みんなで渡れば怖くない」っていう日本人らしさがよく出てる。日本人って真面目って言われるけど、それは一人だけ変なことをするのが怖いというだけであって、みんながやってたらどんな悪事でも平気でやる醜さがあるんだけど、ここに出ている。フットボールチームの中でもローカルルールみたいなのがあってそれを裏切るとリンチされるところとかな。
 次はトカゲのしっぽ切り。S兄さんが一回目の襲撃の罪を償うために殺される羊になったりとか、万延元年の一揆でも村全員でやったくせに若者に全責任を押し付けて知らんぷり、今回の弟も暴動の責任を最終的に全て被る結果になったわけだ。こういう卑屈さがよく出てる。
 他者への視線。常に他者のスキャンダルを探り当てようとする醜さ。主人公の知らないところで弟が倉屋敷を全部売り払ったことを村人が知っていて、怒らせるために彼に事実を教えるところとかな。また、一旦村の外の人間だと認識すると全く関わろうとしない外への無関心。
 最後は人間的な話で、自分の悪を自分でさばくことができず他者にどうにかしてもらいたいと願う弟の感情。人間って悪いことして良心の呵責に悩まされたところで、自分で罰することはできなくて、他の何かで他者によって罰せられることを望んでそうした事態を起こそうとするところあるよな。こういう弱さが描かれている。

まぁ他にもいろいろあるんだけど、こうやって複雑な要素が組み合わさった小説だった。悪文なのもよくわかった。読みにくすぎて同じ文章何回も繰り返して読み返したことも何度かあったけど、全体的にはそんなもんかというところ。
ラノベとこの作品を比べてるチンパンブログがあって、死んだ方がいいと思いました終わり