うひょーくんのブロマガ

つまりそういうこと

25

改札を抜けて、ホームに着く。
「いつ来るんだっけ」
「21分だから、あと4分」
 あと4分。次の電車の時刻を告げる看板と、隣にある時計の針の動きが迫ってくる。立っているのが辛くなってきて、その場を小さく歩き回ってみる。今、近くには歩美の他には誰もいない。彼女は無言でスマホをいじっている。画面が緑色だから、たぶんLINEでも返しているのだろう。少しでも触れば折れてしまいそうで、無力な指の動きが、気になって仕方がない。その動きが何を示しているのかが気になって仕方がない。
 足踏みしているうちに、聞きなれた騒音が近づいてきてしまった。あと50分。流れていく風景を止めることができないのがもどかしい。刻々と家が迫ってくる中、ひたすら考えを巡らせていたが、あまりに静かであることに違和感を覚えて隣に注意を向けた。彼女は目を閉じていた。それは二度と覚めぬ眠りについているようにも見える。神が意図的に作ったとしか考えられない完成された構造を眺めていると、現実と幻の境目が徐々に薄れてくるからだと思う。飾って永遠に眺めていたい衝動に駆られるが、そもそも彼女は生きている人間だということに気づき、我に返る。新次郎は、しばしばこの衝動に駆られる。白雪姫は死んだあと、その美しさ故に小人達によって眺められ続けて埋葬されず、やってきた王子に死体でもいいからと持って行かれた。最初読んだときは気持ちが悪くなったものだが、最近はわかる気がする。