うひょーくんのブロマガ

つまりそういうこと

16

「せっかくだし、一緒に外行かない?」
「交通費が出るなら行ってもいい」
「いいよ出してあげる」
 突き放すつもりで言ったのに、キリストの如き寛大な精神で返されて、心が痛む。よっぽど、暇なんだろうか?友達とどっかいかないのだろうか?
「あっ」
 顔中に血が巡るのを感じる。いや、そんなはずはない。そう思いながら、昔のことを思い出した。
 新次郎には幼馴染がいる。いつでもどこでも、くっついて遊ぶ仲であった。当然、この関係は永遠には続かない。最初の変化は登下校だった。それまで何気なく二人きりで帰っていたが、常に逃げ出したい衝動に駆られながら帰るようになった。次に、視線が怖くなった。目を合わせるだけで何か悪い心持がする。そうして、手と手が触れると緊張する、顔を見れない、どんどん普通に接することができなくなっていた。恋を心が知ったのである。それでも、向こうはいつまでも話しかけてきた。友達の中には既に成熟した者もいて、こうした行為が恋愛の一つのアプローチであることを聞いていたので、最初の不安は徐々に薄れていき、代わりに自信が顔を出した。ばれない様に細心の注意を払いつつも友人に聞いてみたり、月9ドラマを見て、思いを告げる方法を探り、地道に計画を立てていた。
 その日は突然やってきた。彼女が一緒に帰るのをやめようと言い出した。その時すべてを知る。深い嘆きに包まれつつも、追い打ちをかけるようにあの事件が起きて、それ以降ほとんど顔を合わせず、連絡先もわからなくなった。