うひょーくんのブロマガ

つまりそういうこと

新24

赤い光が徐々に輝きを失いつつある頃、地上に戻った。
「綺麗だったね!」
「そうだね」
 正直なところ、ビルを上から眺めたという単純な事実しかなく、少しの感動もなかった。あらゆるものに感動を覚えて、心から納得できる言葉を置くことに専念する俳人には到底なれそうもない。いや、俺だって俳人になれるはずだ。さっきのスカイツリーの思い出に無理矢理感動するんだ。空が頭の中に浮かんだ。地上では目の前に空が広がることはなく、圧倒的に建物が視界を占めるのだが、スカイツリーほど高い場所に来るとどこを見ても空が存在している。
「夏の空 世間を見下ろす スカイツリー
 これはいい。スカイツリーから見る広大な空と地上の風景が見えるようだ。
「なにそれ、俳句?」
 声に出てしまっていた。顔が熱くなってくる。最初はいい出来だと思っていたが、この一言で我に返って、元々何も感じてないのだから、どんな言葉を繕っても、必ず軽い俳句になってしまうという単純な事実を認識した。
「俺は貴族だから、俳句を楽しむんだよ。帰ったら麻婆豆腐おいしそう」
 無理矢理、茶化して恥ずかしさを紛らわせる。
「帰ったら味わって食べてね!愛を込めて作ったから!」
 さらに顔が熱くなると共に落胆する。
「そりゃ美味しいね」
 動揺を悟られない様に軽く流す。体中がむずかゆくなってきた。