うひょーくんのブロマガ

つまりそういうこと

イタリアへの旅路、空港まで

イタリアへの旅行の日、私は何度も荷物を点検した。一度日本を出てしまってから、必要なものがあっては遅いのだ。パンツ、シャツ、ズボン、財布、充電器・・・。服は一セットごとにまとめて数え、5日間着られるように確認した。
 スーツケースは前日に買ったばかりのもので、濃い赤に染まっており、光を幾重にも反射させて、新しさを主張している。これからの冒険の相棒である。
 まず、JR岐阜駅から米原まで電車に乗る。普通の鈍行電車だ。平凡な休日の1ページの中にいる多くの乗客を眺めながら、最も有意義な休日を過ごす自分の存在を強く認識した。これみよがしにスーツケースを見せつけ、「俺は海外に行くんだぞ」と自己主張していた。
 米原に着くと、今度は新大阪まで新幹線に乗った。自由席で一番前の席に座った。充電がなくなるのが怖くて、スマホはあまりいじらずに、本ばかり読んでいた。だが、文字は頭の中を通り過ぎていく。「海」という言葉を見れば、ヴェネツィアの光景が思い浮かんだ。船の上、コパルトブルーのさざ波にゆったりと流されながら、島に近づいていく、静かな世界。ローマの遺跡の数々、バチカン市国の大きな教会、ダビデ像・・・。想像が想像を呼び込んだ。
 新大阪から、関西国際空港までは特急電車に乗った。スマホの時計を何度も見返して、目前に迫った空港にいつ到着するのか確認した。もう一週間前から全身を満たしている期待が、発散する場所を求めて焦れていた。
 座っているうちに待ちきれず、車内販売からお菓子を買ってしまう。あと少しのはずが、とても長い。本当に間に合うのだろうか?実際に着いて、予約されていないと言われたらどうしよう。考えれば考えるほど不安になってきた。初めての海外旅行である。現実離れしすぎて、今でも嘘に思われた。
 ついに到着した。大きなガラス張りの建物で、一階ごとの天井が高い、開放感のある造りになっていた。予め旅行会社から渡された日程表を鞄の中から取り出して、集合場所が四階であること確認する。外貨両替をしている銀行の出張所や、英語で客寄せをするお土産屋さん、そして数多くの外国人。そこは日本と世界の境界線であった。
 エレベーターに乗ろうとすると、旅行帰りの家族が大荷物を持って降りてきた。お土産は何がいいだろうか?お菓子はあるのか?パスタでもいいか?何人分買えばよかったっけ?やっぱり最終日に買うのがいいよなぁ。今1000ユーロあるから一日200ユーロか、考えて使わないとなぁ。昇っていく中、資金計画を立てていた。