うひょーくんのブロマガ

つまりそういうこと

ちょっと重い話

ここ二日間、雨が降りそうで降らない状況が続いていた。それでも、今朝は大雨が降っていた。三日連続で上司と一緒に謝罪しに行ったので、人知れずトイレで泣いていた。鏡を見ると、目のくまができていて、げっそりしている。もう仕事辞めたい。
 何度もいろんな人に謝罪しているように見えるが、一人にしかしていない。他のお客さんは優しい人ばかりだ。例えば、僕のことを「坊ちゃん」と呼んで可愛がってくれるお婆さん。あまりの優しい声に、緊張でガチガチの僕も一瞬で打ち解けた。ある陽気なおばちゃんとはラインを好感した。車を見るだけで、ニコニコしながら挨拶してくれる元気な人である。会話するだけで、僕のゲッソリした顔も少しは明るくなっていたに違いない。
 さて、今日の午前が過ぎたあと、悲しみに暮れながらもお客さんの前でのテンションを保つために、車の中でベートーヴェンの「トリオ大公」を元気に口ずさんでいた。この曲は軽快で、僕の身体を軽くなった気にさせる。
 心の底からニヤニヤしながら、スーパーハイテンションな僕はある会社を訪問した。給与の振込の明細を渡すためだ。駐車場に着くと、社長が「お!?きたな!?」と嬉しそうな表情でこちらを見ていた。初めて一人で会うので緊張していたが、一瞬で軽い気持ちになった。
 用件だけ先に済ませようと、鞄から明細を出して社長に渡した。すると社長は明細を指差し、こちらを見て
 「これが俺の給料や」

  『80,000円』

 それが月収であった。リーマンショックの影響で一気に売上が減少。従業員の給料を半額以下にしたらしい。そしてけじめをつけるために、まず自分の給料を一番少なくしたというのだ。マルクスも驚いたであろう。現代の資本家の中には、もはや搾取など眼中にない人間もいるのである。
 続いて一人一人の名前を呼び上げながら、従業員の給料を話し始めた。
 「お前は給料少ないって嘆いとるかもしれんが、意外と高給取りやで」
 と言われた。その会社の従業員は、誰も僕の月収を超えていなかった。
 「こいつは給料じゃ生活できないから、会社に住ませている。家賃光熱費も払えないからな」
 と、また名前を指差した。あの元気なおばちゃんだった。ニコニコした顔の裏側でものすごい苦労していたのである。だが、その境遇を完全に隠し通していたのだ。
 僕は自分が恥ずかしくなった。この四日間、謝罪だらけで死んだような顔をしていたが、給料がもらえるだけハッピーなのだ。もう苦痛を顔に出すまい。これからは辛くても、笑顔で元気に働こうと決めた。