うひょーくんのブロマガ

つまりそういうこと

僕の仕事はインテリアコーディネーター

東京を去ってから一年、徐々に仕事が忙しくなってきた。数か月前から全く関係ない係の雑用のせいで、本来の仕事が処理できない日々が続いている。人生で最も他者を憎んでいる、と言っても過言ではない。ストレスのあまりニキビが増えた。鼻血が止まらない。クソアマどもくだばりやがれ。
 さて、僕は愚痴を垂れ流すために書いたわけではない。奇怪な話をしにきたのである。二週間くらい前、店に観葉植物がやってきた。赤と黄色を中心として、真ん中に木がある豪華なものだ。植えられている花の種類はわからない。話は脱線するが、三島由紀夫曰く、こういった説明の仕方は怠惰極まりないそうだ。ちゃんと調べろということらしい。知るかボケ。
 本題に戻り、花の話。県から送られてきたもので、付き合いで飾ることになったらしい。県の植物の素晴らしさを紹介する目的だそうだ。とんでもない税金の無駄遣いである。県民から取った税金を、県民に宣伝するために使う。まさに愚の骨頂。とはいえ、鮮やかな色彩には目を見張るものであり、無駄遣いも悪くねぇなぁ!?と思っていた。
 そして一週間後、花が店に残ることになった。支店長が、経費で買ったのである。そこまでならいい。まとめて飾っていた室内用花壇が、撤収されてしまったのである。その日の夕方、置く場所のない植木鉢が、無残にも新聞紙の上に並べられた。底から漏れた水が作る染みが、哀愁を漂わせていた。支店長もまずいと思ったのだろう。早速僕は、飾る台を探してこいと命じられた。ついでに直属の上司も巻き込まれた。
 探すこと10分、台を見つけた。立派な花壇ではなく、三段構成のラックである。ようやく解放されると考えていた僕は、上司と支店長の三人でいそいそと花を飾った。
 「これじゃ下の花が良く見えんなァ」
 と支店長がこぼした。三段の板の間の高さが足りず、花の上半分が隠れてしまっていたのである。
 「二段目を外して、一番下の近くにつけなおしてくれんか?」
 「別につけなくてもよくないですか?」
 僕はそこに拘った。なぜか?そもそも店にレンチがないのだ。だから、ペンチでやる必要があった。それだけで時間がかかることが、容易に想像できたのである。だが、その誘導は見事に失敗した。
 「いや、強度の問題があるやろ」
 意味が分からなかった。強度ってなんだ?一つ板無くなったくらいで壊れんやろ。壊れるにしても植木鉢はそんな重くないぞ。池沼か?そう思っていたが、上司の命令は絶対である。僕は板を外して、付け直した。ここまでで30分。植木鉢を置く皿がなかったので、経費で買って次の日に飾ることになった。
 翌日、花を飾った。生け花の名人がいるぞぉ!?そう叫びたい出来であった。大きく広がった花を中心に、小さくまとまった花を衛星のように配置。空間的な広がりを意識しつつ、まとまりを維持するガチ両刀であった。満足して、朝の雑用をこなしていると
 「うひょーくん」
 支店長である。花を訝しげに眺めている。僕は急いで近寄った。
 「この花は端っこに置いた方がええなぁ。そう思わんか?」
 「そう思います」
 全くそう思いません。しかし、イエスマンうひょーは大きな花を端に移動させ、小さい花を真ん中に据えた。風流もくそもない。いとわろし。地球は太陽の周りを回っているのだ。決して、太陽が地球の周りを回っているわけではない。支店長の行動は、コペルニクス的転回であった。
 悶々とした気持ちを抱えながら一週間が経った頃、宅配がやってきた。どこの会社でもそうだと思うが、店で使うボールペンやホッチキスは、経費で購入する。数日前、僕は注文していたのだった。何かがおかしい。すぐに違和感に気づいた。ホッチキスの針と、シャーペンの芯だけしか頼んでいなかったのに、段ボールが二つやってきたからだ。
 恐る恐る開けると、大きな箱がいくつか入っていた。とりあえず出してみると、カタログスタンドだった。僕は頼んでいないので、先輩に聞いた。
 「それ、支店長が頼んだよ」
 またか。だが、新人はぼろ雑巾である。不本意ではあったが、使い道を聞いてみた。すると、
 「窓口の机のチラシを整理するために買ったんや」
 とおっしゃった。チラシは既に整理されていた。このおじさんは何を言っているのだろう?だが、新人は機械である。もう詳細について述べる必要はあるまい。時間だけ言っておく、40分費やした。それだけ時間をかけたおかげで、窓口は綺麗に整頓された。匠もびっくりである。善行には犠牲がつきもの、僕の仕事は終わらず先輩が肩代わりした。世の中こうやっていい人は損するんやなって思った。
 そんなわけで、今日は店に置いてある雑誌の棚の位置をずらした。結局、一週間のうちに店中の飾り付けをほぼ全て変えた。
 こういうわけで、僕はインテリアコーディネーターに転職しました。