うひょーくんのブロマガ

つまりそういうこと

それから、どれだけ経ったでしょうか。気づけば、周りがまた明るくなってきました。おじいさんは立ち止まり、笑顔になりました。松茸です。柴刈りは建前で、秋になると、誰にも見つからないように、この山の宝石を獲りにきていたのです。おじいさんは、長年培った方向間隔があって、迷うことなく、松茸の群生地に辿りつき、家に帰ることができました。籠と背中の間に結びつけておいた袋を取り出して、赤子を可愛がるかのように優しく、一つ一つ獲っていきます。
 しばらくして、袋が一杯になると、おばあさんの喜ぶ顔を想像しながら、帰りを急ぎました。森は暗くなりました。来たときと同じように、確信をもって帰ります。日が落ちかけて、周りが見えなくても平気です。どうやって松茸を食べようか?そのまま焼いて食べようか?蒸して食べようか?楽しい気持ちが湧き上がってきて、早く帰りたい気持ちでいっぱいです。小躍りしながら、ずんずん進んでいきます。
 徐々に日が落ちてきました。いつもなら、もう家に着いているころなのに・・・。おじいさんは、不思議に思いましたが、今まで一度も迷ったことがなかったので、大して気にしませんでした。自分の勘に従って、自信を持って歩いていきます。しかし、行けども、行けども、森しかありません。入り口の目印、林すら見えてこないのです。
 松茸のことばかり考えていたので、わからなくなったのかもしれない。そう思って、一度立ち止まり、集中しました。それでも同じ方向に歩くようにと告げています。歩くのが遅いのだと、考え直して、真っ直ぐ歩き続けました。少しずつ、足が思うように動かなくなってきて、息が上がってきます。このままでは、帰る前に歩けなくなります。背中の籠を降ろして、柴を捨て、その中の一本を杖にして歩き続けましたが、一向に山から出れそうにありません。おじいさんは、勘が効かなくなったことに気づきました。迷ったのです。それでも、勘に頼るしか方法がありません。狼の鳴き声が聞こえます。動物の気配がします。フクロウが不吉に鳴いています。