うひょーくんのブロマガ

つまりそういうこと

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その日、新鮮な世界の姿を目にした。電柱、建物、道路のタイル。全ての形の違いが、くっきりと映し出され、流れていった。今まで存在しなかったものだ。いや、存在していたし、見えてもいたが、それでも見えなかった。蛹のように殻を脱ぎ捨てたわけではない。元々なかったものでもない。ただ、存在を世界の仲間に入れただけだった。世界は彼女。恋は盲目。失恋という劇薬によって、新次郎は強引に視力を回復させられたのだ。その結果、見えすぎる眼は、人間の心を見通すようになった。もちろん、そんな力は備わっていない。失われた世界の虚無を埋める為に、作られた新たな建築物である。