うひょーくんのブロマガ

つまりそういうこと

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試験は一問のみの記述式だった。
問1.正義について論じなさい。
事前に問題は知らされており、昨日の中途半端な勉強でも十分解けるものだったので、新次郎の筆は順調に進んだ。
プラトンによれば、正義は個人間の調和である。個々人は与えられた職務を適切に遂行し、他者の邪魔をしないという国家の成り立ち、維持していく為の規則のようなものである。それに対してアリストテレスは、現在でも言われているような平等の正義に言及している。より多く働いた者にはより多くの報酬を与える比例的な財産の分与が正義であり、窃盗による財産の増減は罰せられるというごく自然の結論に結びつくのである。それから長い間、正義の議論はされなくなった。キリスト教が広まることで、神すなわち聖書に全てを委ねれば考える必要がなかったからである。それでも、ルネサンスが始まってヒューマニズムの波がやってくるにつれてこの議論は復活した。代表的なものはトマス・ホッブズの「リヴァイアサン」である。本来人間は裏切りや殺し合いが日常茶飯事の野蛮人であると仮定され、戦わないという約束をしようとしても、先に破られるのではないかという恐怖から無意味なものとなり人を協調させず、国家が実在している事実とは異なってしまう。そこで、リヴァイアサンという一つの大きな何かを想定し、約束を結んだ瞬間にあらゆる攻撃手段を奪い取り、攻撃させないようにすることで国家が誕生したことにした。こうして、国=正義という構図が作られたのである。ホッブズ性悪説がある一方で、性善説も生まれる。