うひょーくんのブロマガ

つまりそういうこと

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気分転換に周りを見渡すと、どこかで見たような顔があった。ふっくらとしていて、柔らかそうな唇は今もなお心をとらえて離さないのだが、他のパーツは普通だった。全体的に痩せており、頬骨が出っ張っていて、唇の大きさをより強調している。髪の毛は真っ直ぐ何もいじっておらず、自然に肩に流れていた。身長は最後に会った時と変わっていない。いや、全てが昔と全く変わっていない。苦い思い出が湧き上がってきて、見ているのが辛くて仕方ないのだが、視線を移すことができない。そうしているうちに、あちらも気がついて近寄ってきてしまった。逃げようとしたのだが、身体がいう事を聞かず、立ち上がれない。急に息苦しくなってきて、口を開けて吸い込もうとするのだが、顎が固まっていて動かず震えるだけだ。こじ開けようとする手も、やはり動かない。全身が何かに拘束され、電車の中の様々な音が頭の中で反響し、まぶたが重くなるのだが、なぜか目を閉じることはできない。隣のサラリーマンの身体の感触と意味のない音、そして近寄ってくる裏切りだけがそこにあった。彼女は昔と変わらぬ笑顔でこちらの目を見ながら
「意気地無し」
と放つ。その瞬間、目が覚めた。