うひょーくんのブロマガ

つまりそういうこと

31

早朝の電車は静かで、ゆっくりと好みの席を探して座ることができた。長椅子の隅っこに座り、リュックを背中から降ろして、膝の上に置く。そのまま目を閉じて、身体の力を抜き、左の壁に身を任せる。ほどよく冷房が効いていて、日差しが暖かく感じられるから、眠るのにちょうどいい空間になっていた。あとは自分が心を落ち着けて、今日幾度となく彷徨った夢の世界に溶け込むだけだ。呼吸に耳を傾けながら、勉強を続けるために維持し続けた緊張感をほどいていこうとした。しかし、下腹部の痛みがそれを妨げ、違う緊張感で心を満たす。同時に、昨日の出来事が湧き上がってきて、後悔という悪魔を生み出し、精神世界を徘徊しながら自己嫌悪のガスをまき散らしていく。
「うん、またね。」昨日の最後の言葉が乱反射して暴れまわる。帰り際の数分のやり取りにおいて、いつもの優しげな声音は消え去って、初対面の他人にかけるような硬い響きに包まれており、静かな透き通った目は、確かに俺の姿を映していたが、全く別の世界を見ていた。あの特徴的な絶妙な頬は、両目の動きとの調和を失って、不自然につりあがり、今までに見たことのない笑顔を絞り出していた。全てが自分に対する失望で彩られていたと思う。「また」はもうほとんど残されていないことは何度も反芻して、自分を奮い立たせたはずであった。それでも、周りの目という便利な言い訳を使って、「ほとんど」に残された未来にもっと素晴らしいチャンスがあると、勝手にこじつけて、その結末を放り投げてしまったのである。