うひょーくんのブロマガ

つまりそういうこと

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「最近顔色が悪いぞ。服もボロボロだ。こんなホームレスのような男と話す物好きは俺くらいかもしれん。」
山中は無情にも追い打ちをかけてきた。自分が何か犯罪をして刑事に追い詰められているような気分になっている。被疑者の最後の抗弁が始まった。
「そうだ。まさにそれなんだ。今の俺は金がないことによって金がなくなってる。俺と話すやつはお前くらいしかいない。そんなやつを誰も雇わないから落ちるに決まっている。俺だって最初はまだ働く気はあった。でも今じゃ履歴書を買う金すら厳しいから面接を受けるだけで一大事だ。大金を叩いても落ちるとわかっていて受ける馬鹿はいないだろう。それに、今は腹が減って話していることすらきつい。落ちに行く栄養があるくらいならその日を過ごすことに使う方が短期的には合理的だ。今なら生活保護者が元気になっても働かない理由がわかるぞ。僅かな資金を使って職を得られるとは思ってないし、働かなくたって生きることならできるから余計なことをしたくないんだ。そうに決まってる。」
刑事はこっちの言い分を聞きながら冷笑していた。最初は説得力のある素晴らしい抗弁だと思っていたけど、話しているうちに自分でも何を言っているかわからない。完全に脳が止まっていて、言葉が全く出てこない。そんな状況を打破すべく、今日一日で使う栄養を注ぎ込んで必殺の一言を告げた。
「要するに、貧乏は貧乏を産むってことだよ。わかるか?」
だらだらと語っていたとおり、新次郎は貧乏によって貧乏になっていた。最初は一応今までのお年玉の貯金があったのだ。しかし、さすが愚か者である。一度もアルバイトを探すこともなく、一か月で全てを使い果たした。生活が厳しくなっていざ働こうとなったときには、誰も雇わない人間になっていたのである。さらに悪いことに、貯金が変化したハイスペックパソコンは娯楽を与えてしまった。暇を潰す手段だけは残っていたので、面接で落ちることへの危機感が消え去る。気づけば一日の食事は卵一つで、立ち上がることすら厳しい。今日も山中が昼食を奢ってくれなければ会うことはなかっただろう。友人と話に来たわけではない。物乞いをしにきたのだった。