うひょーくんのブロマガ

つまりそういうこと

小説

新次郎は無限とも思われる時間を持ったまま使い方が思いつかず眺めていた。元々新しいものを求めてやまない若者らしさがあると自負しているものの、実際に飛びついたことはほとんどない。ようやく飛びついてみても、三日もすれば眺める生活へと戻っていく。彼は、自らを取り巻く貧困こそが気力を蝕んでいる元凶だと考えていた世の中全て金である。無限の時間も貧困の前にはオーパーツである。全ては人生のほとんどを強制労働させられる資本主義のせいである。ある時、友人にこの状況を馬鹿にされたことがある。
「お前は金がないから何もできないとか言うけど、バイトすればいいだろ。」
「アルバイトは社会人に比べて給料が非常に低い。時間の無駄遣いだからやらないんだ。」
「金がなくて何もしないよりは無駄じゃないだろう。」
「それでも時給が低いのに働くのは損した気がするからダメだ。お前も経済学部なんだから無差別曲線と予算制約線は知っているだろう。二つの線が重なるところが今の俺の状況なんだ。要するに搾取されつくして残った安月給をもらうより、何もできない時間の方が余程価値があるんだ。」
「変な理論を持ち出しても、結局辛いから働きたくないだけじゃねえか。そのくせ暇だと文句を垂れるとか甘えるんじゃない。」
この一言にはただ黙るより他なかった。所詮は自らの怠惰の結果であることは自明の理である。新次郎は真実に気づいていながら、合理的な人間という称号を強引に持ち出して自らの貧しさを質素倹約の美徳へ作り変えていた。