うひょーくんのブロマガ

つまりそういうこと

21 修正

露店が並ぶソラマチを超えて、入口に着く。そこからスカイツリーを見上げると、どこまでも幅を小さくしながら天へ伸びていく四隅の柱のラインを中断させ、巨大な展望台が逆方向へ押し広げていき、その先を隠している。多くの人を収容する場所を違和感を感じさせずに配置するためにかけられた人と時間を想像すると、柱の間に組まれた幾多もの鉄骨一つ一つの意味を考え始めた。
「ちょっと!早く行くよ!」
その声が外観を評価する自称風流人に成りきっていた俺を、現実に戻す。こうやって夏目漱石も自然と人情に引き戻してくる世界に四苦八苦しながら、非人情を描いたのだと思う。入口を抜けるとチケットを買うための果てしない列が見える。もう一つ塔を登っていく為の列は先が見えない。
「一時間待ちだってさ」
「平日なのにこんなに並んでるもんだね。とりあえず並ぼうか」
「たぶんあそこが最後尾」
指差す先に向かって一緒に歩いて、列に並んでいるうちに胸がざわついてきた。一時間も話すネタがないぞ。いつも何話してたっけ、そういや、ここに来るまでほとんど何も話してない。右頬が歪む。一人に慣れすぎて、沈黙の気まずさなんて感じてなかったな。そうして、様子を盗み見たつもりだったが、目が合ってしまう。困った。
「新ちゃんってさ、どこに就職したいとかある?」
「まだ特にはないかな」
一瞬で助け舟は沈む。
「どこで働きたいとかないの?」
「東京にしようかと思ってる。歩美はどうなん?」
「お母さんに家に帰るように言われてて、迷ってる」
「そうなんだ。じゃあ、こうやって気軽に遊ぶのもあと一年半かもな」
あと一年半。全身から血の気が引く。自分の軽い言葉に、時間の重みを突きつけられる。
「中学三年の時からだから、もう六年半の付き合いか。長いね」
寂しそうな表情を見ると、俺と同じことを考えているらしい。